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保全命令(仮差押え命令、仮処分命令)の発令にあたって、裁判所は申立てを行った債権者に本当に権利が存在するのかどうかを審理しますが、訴訟のように十分な検討ができるわけではありません。そのため、申立てを行った者には全く権利がないにもかかわらず保全命令が発令され、保全の相手方に対して損害が発生する場合があります。
この損害の賠償に用いるために、保全命令の申立てに際しては担保(保証金)の提供が求められるのです。 債権者が提供した担保は、債務者の手に渡ることもありますし、債権者の手に戻ることもあります。
民事保全を行った債権者が本案訴訟で敗訴した場合、債務者は債権者の保全手続によって損害を受けておりますので、債権者に対して損害賠償請求権を有していることになります。
債務者がこの損害賠償請求権の存在を証明する書面(確定判決、和解調書、確定した支払督促など)を供託所(法務局)に提出すれば、債務者は供託所から直接担保の払い渡しを受けることができます。
なお、保全に際しての担保提供が支払保証委託契約の方法によって行われた場合には、債務者は銀行等に対して損害賠償請求権の存在を証明する書面を提示し、その支払いを受けることになります。
担保の事由が消滅した場合とは、保全の相手方となった債務者の損害賠償請求権が発生する可能性が著しく低くなった場合のことです。具体的には、債権者が本案訴訟を提起し、勝訴判決が確定した場合などを指します。
仮に債権者の保全申立てが不当なものであり、債務者が債権者に対して損害賠償請求権を有するとしても、債務者が担保が不要と考え、担保取消しに同意すれば、担保を提供した債権者は担保を取り戻すことができます。
債権者の不当な保全申立てによって債務者に損害が発生した場合、債権者の申立てにより、裁判所は、債務者に対して一定の期間内に損害賠償請求権を行使すべき旨を催告します。
債務者がその期間内に権利行使しなければ、債務者は担保取消しに同意したものとみなされる(擬制される)ことになり、債権者が担保を取り戻すことができます。
裁判所が仮差押命令を発令する場合、必ず仮差押解放金の額を定めなければなりません。仮差押えを受けた債務者が仮差押解放金を供託した場合、仮差押えの執行が取り消されます(仮差押えのない状態になります)。
例えば、債務者が預金口座の仮差押えを受けてしまったが、当該口座が利用できないとどうしても困る場合などは、仮差押解放金の供託によって仮差押えを免れるメリットがあります。
なお、仮処分においては、保全すべき権利が金銭の支払いによって目的を達せられる性質のものである場合に限り、裁判所は仮処分解放金を定めることができます。
債務者が仮差押解放金または仮処分解放金を供託した場合、債務者は国に対して供託金取戻請求権を有することになります。
解放金は保全の対象物の代わりになるものですので、債権者は債務者の国に対する供託金取戻請求権に対して仮差押えを行っている状態になります。債権者が解放金から満足を受けるためには、通常の債権に対する強制執行と同様、債務者が国に対して有する供託金取戻請求権を差し押さえ、取立権を行使したり、添付命令を得たりすることになります。
債務者が解放金を取り戻すことができるのは、保全命令の申立てが取り下げられた場合と、保全命令を取り消す旨の決定がなされた場合です。
債務者は、裁判所から供託原因消滅証明書の交付を受け、これを供託所に提出して供託金の取り戻し手続を行うことになります。
このページをご覧いただければ分かるとおり、民事保全手続の担保や解放金の処理の手続はかなり複雑なものになっております。
民事保全法のみならず、民事執行法及び供託法に関する理解が必要であり、ある意味では、保全申立てより理解が難しいと言っても過言ではありません。保全に関する担保や解放金の処理は、裁判手続・供託手続の専門家である司法書士にお任せください。